交通事故に遭った後、避けて通れないのが「示談交渉」です。
示談交渉とは、交通事故の損害賠償額を加害者側(多くの場合は保険会社)と話し合いで決める手続きのことを指します。
実は、この示談交渉の進め方次第で、受け取れる賠償金が数十万円〜数百万円も変わってくることをご存知でしょうか。
保険会社が最初に提示してくる金額は、法的に正当な金額よりも大幅に低いケースが多く、何も知らずにサインしてしまうと大きな損をしてしまいます。
この記事では、交通事故の示談交渉について、弁護士に依頼するメリット、示談交渉の流れ、自分で交渉する際の7つのテクニック、注意すべきポイントなど理解できるようわかりやすく解説します。
交通事故の示談交渉とは?基礎知識

示談交渉の定義
示談交渉とは、交通事故で発生した損害について、被害者と加害者(または加害者の保険会社)が話し合いで賠償金額を決定する手続きです。
裁判を起こさずに、当事者間の合意で解決する方法として、日本では非常に一般的です。
示談交渉で決まること
示談交渉では、以下のような項目について話し合います。
- 治療費
- 通院交通費
- 入通院慰謝料
- 休業損害(仕事を休んだ分の補償)
- 後遺障害慰謝料(後遺症が残った場合)
- 逸失利益(後遺症によって失われる将来の収入)
- 車両の修理費または買い替え費用
- 代車費用
- 評価損(事故歴による車の価値低下)
示談交渉を始めるタイミング
示談交渉は、すべての損害が確定してから始めるのが原則です。
- 人身事故:治療が終了(完治または症状固定)してから
- 物損事故:修理費用などが確定してから
一般的に、事故後6ヶ月程度で症状固定となることが多く、このタイミングで示談交渉が始まります。
示談交渉の流れ

【STEP 1】事故発生・警察への届出
交通事故が発生したら、まずは警察に届け出ます。物損事故でも必ず届け出を行い、事故証明書を取得しましょう。
【STEP 2】治療・通院開始
怪我がある場合は、すぐに病院を受診し、医師の診断を受けます。
事故直後は痛みを感じなくても、後から症状が出ることがあるため、必ず受診してください。
【STEP 3】症状固定または完治
医師が「これ以上治療を続けても症状の改善が見込めない」と判断した時点を「症状固定」といいます。
完治または症状固定したら、治療は終了となります。
【STEP 4】後遺障害等級認定の申請(該当する場合)
後遺症が残った場合は、後遺障害等級認定の申請を行います。
認定される等級によって、受け取れる賠償金額が大きく変わります。
【STEP 5】保険会社から示談案の提示
治療終了後、加害者側の保険会社から示談金の提示があります。
この金額は、多くの場合「任意保険基準」や「自賠責基準」で計算されており、法的に正当な金額(弁護士基準)より低いことがほとんどです。
【STEP 6】示談交渉
提示された金額が妥当かどうかを検討し、不十分な場合は増額を求めて交渉します。
【STEP 7】示談成立・示談書への署名
双方が合意に達したら、示談書を作成し署名します。示談書に署名すると、原則として後から内容を変更することはできません。
【STEP 8】示談金の振込
示談成立後、通常3営業日〜2週間程度で示談金が振り込まれます。
示談交渉の期間はどれくらい?

事故の種類別の期間目安
| 事故の種類 | 示談交渉開始から成立までの期間 | 事故発生から示談成立までの期間 |
|---|---|---|
| 物損事故 | 1〜2ヶ月程度 | 1〜2ヶ月程度 |
| 人身事故(後遺障害なし) | 3〜6ヶ月程度 | 6ヶ月〜1年程度 |
| 人身事故(後遺障害あり) | 6ヶ月〜1年以上 | 1年〜2年以上 |
弁護士に依頼した場合、交渉開始から1〜3ヶ月程度で示談成立に至るケースが多く、スムーズに進む傾向があります。
弁護士に示談交渉を依頼する5つのメリット

メリット1:示談金が大幅に増額される可能性
弁護士に依頼する最大のメリットは、示談金が増額される可能性が高いことです。
- 自賠責基準:最低限の補償(最も低額)
- 任意保険基準:保険会社の独自基準(自賠責よりやや高い)
- 弁護士基準(裁判基準):過去の裁判例に基づく基準(最も高額)
保険会社は「任意保険基準」で提示してきますが、弁護士は「弁護士基準」で請求できます。
【具体例:むちうちで3ヶ月通院した場合】
- 自賠責基準:約12.9万円
- 任意保険基準:約22.2万円
- 弁護士基準:約53万円
同じ怪我でも、基準が違うだけで2〜4倍の差が出ます。
メリット2:専門知識で適正な過失割合を主張できる
過失割合は、事故の状況に応じて決まりますが、保険会社が被害者に不利な割合を提示してくることがあります。
弁護士は、過去の判例や客観的な証拠をもとに、適正な過失割合を主張できます。
メリット3:保険会社との交渉をすべて任せられる
保険会社とのやり取りは、専門用語が多く、時間も労力もかかります。
弁護士に依頼すれば、すべて代行してもらえるため、精神的な負担が大幅に軽減されます。
メリット4:適切な後遺障害等級認定をサポート
後遺障害等級の認定は、受け取れる賠償金額に大きく影響します。
弁護士は、医療記録の整理や必要な検査のアドバイス、異議申立てなど、適切な等級認定のための専門的なサポートを提供します。
メリット5:示談交渉が早期に進行する
弁護士に依頼することで、保険会社も真剣に対応せざるを得なくなり、交渉がスムーズに進むことが多いです。
自分で示談交渉する場合の7つのテクニック

弁護士費用特約がない場合や、軽微な事故で弁護士に依頼するメリットが少ない場合は、自分で示談交渉を行うこともあります。
以下、実践的な交渉テクニックを7つ紹介します。
テクニック1:事故状況を正確に把握し、証拠を集める
事故現場の写真、目撃者の連絡先、ドライブレコーダーの映像など、事故状況を証明できる証拠を可能な限り集めましょう。情報の優位性が交渉の武器になります。
テクニック2:自分で損害額を計算し、最大限の額を請求する
保険会社の提示額をそのまま受け入れず、自分で「弁護士基準」を使って慰謝料を計算しましょう。弁護士基準は、インターネットで検索すれば算定表が見つかります。
テクニック3:冷静に法と証拠で勝負する
感情的にならず、法律と証拠に基づいて冷静に交渉しましょう。
「弁護士基準で計算すると○○円になる」「過去の判例では○○とされている」など、客観的な根拠を示すことが重要です。
テクニック4:示談交渉は書面で行う
電話での交渉は記録が残らず、言った・言わないのトラブルになりがちです。
可能な限り、メールや書面でやり取りを行い、記録を残しましょう。
テクニック5:2〜3割は譲歩する心づもりで臨む
交渉は譲り合いの側面もあります。最初から最低ラインで交渉せず、2〜3割程度は譲歩できる余地を持たせた金額で交渉を始めましょう。
テクニック6:裁判も辞さない強気の姿勢を示す
「この金額でなければ裁判も検討します」といった姿勢を示すことで、保険会社が譲歩する可能性が高まります。
ただし、実際に裁判を起こす覚悟も必要です。
テクニック7:交通事故判例タイムズを活用する
「交通事故判例タイムズ」は、過去の裁判例に基づいた過失割合の基準をまとめた書籍です。
この本を参考にして、「この事故状況では過失割合は○対○が妥当です」と主張できます。
示談交渉で絶対に注意すべき8つのポイント

注意点1:その場で示談は行わない
事故直後、加害者から「その場で示談しましょう」と持ちかけられることがありますが、絶対に応じてはいけません。
損害の全容が分からない段階で示談すると、後から追加請求ができなくなります。
注意点2:物損事故ではなく人身事故として処理する
怪我がある場合は、必ず「人身事故」として警察に届け出ましょう。
物損事故として処理すると、慰謝料などが請求できなくなります。
注意点3:適切な通院頻度を守る
通院頻度が少なすぎると、「軽傷だった」と判断され、慰謝料が減額される可能性があります。
医師の指示に従い、適切な頻度で通院しましょう。
注意点4:痛みがある場合は医師に必ず伝える
我慢せず、痛みや違和感があれば必ず医師に伝え、カルテに記録してもらいましょう。
記録がないと、後から症状を主張しても認められません。
注意点5:症状固定の時期は医師に見極めてもらう
保険会社から「そろそろ症状固定にしましょう」と言われても、医師が認めていなければ応じる必要はありません。
症状固定のタイミングは、医師が判断します。
注意点6:治療費を打ち切られても通院をやめない
保険会社が治療費の支払いを打ち切ることがありますが、医師が治療の必要性を認めている場合は、自費でも通院を継続しましょう。後から請求できます。
注意点7:領収書などはすべて保管しておく
治療費、通院交通費、薬代など、事故に関連する支出の領収書はすべて保管しておきましょう。
これらは損害賠償請求の根拠となります。
注意点8:示談書にサインする前に必ず内容を確認する
示談書にサインすると、原則として後から変更できません。
サインする前に、金額や内容が正しいか、弁護士や専門家に確認してもらうことをおすすめします。
保険会社の交渉テクニックに注意!

保険会社は、示談金を低く抑えるために、様々な交渉テクニックを使ってきます。
以下のような言葉が出たら要注意です。
要注意フレーズ1:「これが限界です」
保険会社が「これ以上は無理です」と言っても、実際には増額の余地があることが多いです。弁護士基準で計算した金額を提示し、根拠を示して交渉を続けましょう。
要注意フレーズ2:「裁判になっても変わりません」
実際には、裁判になれば弁護士基準で判決が出るため、大幅に増額される可能性が高いです。
このフレーズは、裁判を避けさせるための常套句です。
要注意フレーズ3:「弁護士基準は裁判になった場合だけです」
弁護士が示談交渉を行えば、裁判前でも弁護士基準で請求できます。この主張は誤りです。
要注意フレーズ4:「通院頻度が少ないので減額します」
適切な通院を行っていれば、通院頻度を理由に一方的に減額することはできません。医師の指示に従っていたことを説明しましょう。
示談交渉を弁護士に依頼すべきケース

以下のようなケースでは、弁護士に依頼することを強く推奨します。
- 後遺障害が残った場合
- 保険会社の提示額に納得できない場合
- 過失割合に争いがある場合
- 重傷で治療費が高額になった場合
- 保険会社が治療費を打ち切ろうとしている場合
- 相手が無保険の場合
- 自分で交渉する時間や精神的余裕がない場合
特に、弁護士費用特約に加入している場合は、自己負担なしで弁護士に依頼できるため、積極的に活用しましょう。
よくある質問(Q&A)

記事まとめ

交通事故の示談交渉は、受け取れる賠償金額を決める非常に重要なプロセスです。
保険会社が最初に提示してくる金額は、法的に正当な金額(弁護士基準)よりも大幅に低いことがほとんどです。
- 示談交渉は治療終了後、すべての損害が確定してから始める
- 弁護士基準で計算すると、示談金が2〜4倍に増額される可能性がある
- 弁護士に依頼すれば、専門知識で適正な金額を請求できる
- 自分で交渉する場合は、7つのテクニックを活用する
- 保険会社の交渉テクニックに惑わされない
- 示談書にサインする前に必ず内容を確認する
- 弁護士費用特約があれば、自己負担なしで弁護士に依頼できる
交通事故に遭ってしまったら、一人で悩まず、まずは無料相談を利用して専門家のアドバイスを受けましょう。
適切な示談交渉を行うことで、正当な賠償金を受け取り、安心して治療や日常生活に専念できる環境を整えることができます。


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