交通事故の示談交渉で「弁護士に依頼した方がいい」という話はよく耳にしますが、実はすべてのケースで弁護士依頼がベストな選択とは限りません。
特に軽微な事故では「費用倒れ」になったり、期待した結果が得られなかったりするリスクも存在します。
本記事では、交通事故の示談を弁護士に依頼する際のデメリットに焦点を当て、どのようなケースで注意が必要か、費用倒れを防ぐにはどうすればいいのかを詳しく解説します。
また、弁護士費用特約の活用方法や、依頼すべき・避けるべきケースの判断基準も具体的に紹介します。
正しい知識を持って賢く判断することで、後悔のない示談交渉を実現しましょう。
交通事故で弁護士に依頼する主なデメリット

交通事故の示談交渉を弁護士に依頼することには多くのメリットがありますが、同時にいくつかのデメリットも存在します。まず、デメリットを正しく理解することが重要です。
1-1. 弁護士費用が発生する(費用倒れのリスク)
弁護士に依頼する最大のデメリットは、弁護士費用が発生することです。特に軽微な事故や損害額が少ない場合、弁護士費用が賠償金の増額分を上回ってしまう「費用倒れ」が発生するリスクがあります。
弁護士費用の一般的な相場:
- 着手金:15万円〜30万円
- 成功報酬:獲得額の10〜20%+固定報酬10万円〜20万円
- 法律相談料:初回無料〜1時間1万円程度
例えば、保険会社からの提示額が50万円で、弁護士が介入して80万円に増額できたとしても、弁護士費用が40万円かかれば、実質的な手取りは40万円となり、弁護士に依頼しなかった場合と変わらないか、むしろ損をする可能性があります。
1-2. 軽微な事故では増額幅が小さい
すり傷や軽い打撲などの軽傷事故、短期間の通院で済んだケースでは、そもそも賠償金の増額幅が限定的です。
弁護士基準を適用しても数万円〜数十万円程度の増額にとどまることが多く、弁護士費用を考慮すると費用倒れになる可能性が高まります。
1-3. 解決までに時間がかかる場合がある
弁護士が介入することで、示談交渉が長期化するケースもあります。
特に過失割合で大きな争いがある場合や、後遺障害等級認定に異議申し立てを行う場合は、数ヶ月〜1年以上かかることも珍しくありません。
早期に解決して生活を立て直したい方にとっては、時間がかかることがデメリットになる場合があります。
1-4. 弁護士選びに失敗すると後悔する
すべての弁護士が交通事故案件に精通しているわけではありません。
経験の浅い弁護士や、連絡が取りづらい弁護士に依頼してしまうと、「期待した結果が得られなかった」「放置された」「連絡が取れない」といった不満につながります。
弁護士に依頼して後悔した事例では、以下のようなケースが報告されています。
- 交通事故の経験がない弁護士だった
- 連絡が取れず、対応が遅い
- 説明が不十分で、進捗がわからない
- 態度が横柄だった
1-5. 弁護士費用特約がない場合の自己負担
自動車保険に「弁護士費用特約」が付帯していない場合、弁護士費用は全額自己負担となります。
特約があれば通常300万円まで保険会社が負担してくれるため、ほとんどのケースで自己負担ゼロで依頼できますが、特約未加入の場合は慎重な判断が必要です。
費用倒れになりやすいケースとは?

弁護士に依頼して費用倒れになりやすいケースを具体的に見ていきましょう。
2-1. 軽微な物損事故のみ
人身事故ではなく、物損事故のみのケースでは、慰謝料が発生しないため、賠償金の増額余地が限定的です。
修理費用や評価損、代車費用などが争点となりますが、増額幅は数万円〜十数万円程度にとどまることが多く、弁護士費用を考慮すると費用倒れになる可能性が高いです。
2-2. 通院期間が1〜2ヶ月程度の軽傷事故
むちうちや打撲などで通院期間が1〜2ヶ月程度の軽傷事故では、慰謝料の増額幅が小さくなります。
軽傷事故の慰謝料相場(通院1ヶ月の場合):
- 自賠責基準:約12.9万円
- 任意保険基準:約12.6万円〜25.2万円
- 弁護士基準(裁判基準):約19万円
この場合、増額幅は数万円程度となり、弁護士費用特約がなければ費用倒れのリスクが高まります。
2-3. 後遺障害が認定されないケース
後遺障害等級が認定されない場合、後遺障害慰謝料や逸失利益が請求できないため、賠償金の総額が低くなります。弁護士が介入しても大幅な増額が見込めず、費用倒れになる可能性があります。
2-4. 被害者側の過失割合が大きいケース
過失割合が5:5や6:4など、被害者側の過失が大きい事故では、最終的に受け取れる賠償金が過失相殺により大きく減額されます。
弁護士が介入しても、過失割合の修正が難しい場合は増額幅が限定的になります。
弁護士に依頼しない方がいいケース
以下のようなケースでは、無理に弁護士に依頼せず、保険会社の示談代行サービスやADR(裁判外紛争解決手続き)を活用する方が効率的な場合があります。
3-1. 損害額が10万円以下の軽微な事故
傷の治療費や修理費が数万円程度の軽微な事故では、弁護士に依頼するメリットがほとんどありません。
保険会社との直接交渉で十分対応できます。
3-2. 過失割合が明確で争いがないケース
信号無視や一時停止違反など、過失割合が100:0や90:10で明確なケースでは、弁護士が介入しても大きな変化が見込めない場合があります。
3-3. 弁護士費用特約がなく、損害額が50万円以下のケース
弁護士費用特約に加入していない場合で、損害額が50万円以下の場合は、弁護士費用を差し引くと手取りが減る可能性が高いです。
無料相談で見積もりを取り、費用倒れのリスクを確認しましょう。
弁護士費用特約を活用すればデメリットを解消できる

弁護士に依頼する最大のデメリットである「費用」の問題は、弁護士費用特約を利用することで解消できます。
4-1. 弁護士費用特約とは?
弁護士費用特約は、自動車保険に付帯するオプション特約で、交通事故の示談交渉や訴訟にかかる弁護士費用を最大300万円まで保険会社が負担してくれる制度です。
弁護士費用特約のメリット:
- 弁護士費用の自己負担がゼロまたは最小限
- 特約を使用しても保険等級が下がらない(保険料に影響しない)
- 法律相談料も10万円まで補償
- 弁護士を自由に選べる
4-2. 弁護士費用特約の使い方
- 特約加入の確認:自分の自動車保険の証券や契約内容を確認
- 保険会社への連絡:弁護士に依頼したい旨を伝える
- 弁護士の選定:保険会社から弁護士の紹介を受けるか、自分で選ぶ
- 弁護士との相談・契約:無料相談を利用して、事故状況や見通しを確認
- 保険会社への請求:弁護士費用は保険会社が直接支払う
4-3. 家族の保険も確認しよう
弁護士費用特約は、契約者本人だけでなく、配偶者や同居の親族、別居の未婚の子も利用できることが多いです。
自分が加入していなくても、家族の誰かが加入していれば利用できる可能性があるため、必ず確認しましょう。
弁護士に依頼すべきケース

一方で、以下のようなケースでは、デメリットよりもメリットの方がはるかに大きく、弁護士に依頼することが強く推奨されます。
5-1. 後遺障害が残った(または残る可能性がある)
むちうちや骨折、視力障害、高次脳機能障害など、後遺障害が残った場合は、後遺障害慰謝料と逸失利益が請求できるため、賠償金が大幅に増額します。
後遺障害慰謝料の相場(弁護士基準):
- 14級:110万円
- 12級:290万円
- 10級:550万円
- 7級:1,000万円
5-2. 過失割合に納得がいかない
保険会社が提示する過失割合に納得がいかない場合、弁護士が過去の判例や事故状況を精査し、適切な過失割合を主張できます。
過失割合が10%変われば、受け取れる賠償金が数十万円〜数百万円変わることもあります。
5-3. 重傷で通院期間が6ヶ月以上
骨折や脳挫傷など、通院期間が6ヶ月以上にわたる重傷事故では、慰謝料の増額幅が大きくなります。
入通院慰謝料の相場(重傷・通院6ヶ月の場合):
- 自賠責基準:約77万円
- 任意保険基準:約90万円
- 弁護士基準:約116万円
増額幅は数十万円になるため、弁護士費用を差し引いても十分なメリットがあります。
5-4. 相手方が弁護士を立ててきた
相手方(加害者側)が弁護士を立ててきた場合、法律の専門知識がない被害者が単独で交渉すると、不利な条件で示談させられるリスクが高まります。この場合は、すぐに弁護士に依頼しましょう。
5-5. 死亡事故
死亡事故では、死亡慰謝料、逸失利益、葬儀費用など、賠償金が数千万円〜1億円を超えることもあります。
弁護士に依頼することで、適正な賠償金を獲得できる可能性が高まります。
弁護士選びで後悔しないための5つのポイント

弁護士に依頼する際は、以下のポイントに注意して弁護士を選びましょう。
6-1. 交通事故案件の実績が豊富か
交通事故案件の取り扱い実績が豊富な弁護士を選びましょう。
ホームページで「交通事故専門」「年間取扱件数○○件以上」などの表記を確認します。
6-2. 初回相談で費用倒れのリスクを説明してくれるか
誠実な弁護士は、初回相談の段階で「この案件では増額が難しい」「費用倒れのリスクがある」と正直に教えてくれます。無理に依頼を勧めてくる弁護士は避けましょう。
6-3. 弁護士費用の見積もりが明確か
着手金、成功報酬、実費などの費用体系を明確に説明してくれる弁護士を選びます。
曖昧な説明や、後から追加費用を請求される可能性がある場合は注意が必要です。
6-4. コミュニケーションが取りやすいか
連絡が取りやすく、進捗状況をこまめに報告してくれる弁護士を選びましょう。メールやLINEでの連絡に対応しているかも確認します。
6-5. 複数の弁護士に相談する
1人の弁護士だけでなく、複数の弁護士に無料相談を利用して、対応や見積もりを比較することをおすすめします。
弁護士に依頼しない場合の選択肢

弁護士に依頼しない場合でも、以下のような選択肢があります。
7-1. 保険会社の示談代行サービス
自分にも過失がある事故(0:100ではない事故)の場合、自分の保険会社が示談代行サービスを提供してくれます。
保険会社の担当者が相手方保険会社と交渉してくれるため、自分で対応する負担が軽減されます。
ただし、保険会社は弁護士基準ではなく任意保険基準で交渉するため、賠償金が低めになる傾向があります。
7-2. ADR(裁判外紛争解決手続き)の活用
弁護士に依頼せずに、中立的な第三者機関に示談の仲介をしてもらう方法です。
無料で利用でき、和解案に強制力はありませんが、保険会社は原則として和解案を受け入れる仕組みになっています。
主なADR機関:
7-3. 自分で交渉する
損害額が小さく、争点が明確なケースでは、自分で保険会社と交渉することも選択肢の一つです。
ただし、法律知識がないと不利な条件で示談してしまうリスクがあるため、慎重に判断しましょう。
よくある質問(Q&A)

Q1. 弁護士費用特約がない場合、弁護士に依頼するのは諦めるべき?
いいえ、諦める必要はありません。無料相談を利用して、費用倒れのリスクがあるかどうかを確認しましょう。
後遺障害が残ったケースや通院期間が6ヶ月以上のケースでは、弁護士費用を差し引いても十分なメリットがある場合が多いです。
Q2. 弁護士に依頼すると、必ず賠償金が増額する?
いいえ、必ず増額するわけではありません。事故の状況や損害の内容によっては、増額幅が小さかったり、増額できなかったりするケースもあります。初回相談で見通しを確認することが重要です。
Q3. 軽微な事故でも弁護士費用特約があれば依頼すべき?
弁護士費用特約があれば、自己負担なく弁護士に依頼できるため、軽微な事故でも依頼するメリットがあります。
ただし、増額の見込みがほとんどない場合は、保険会社の示談代行サービスで十分なこともあります。
Q4. 弁護士に依頼したら、裁判になる?
いいえ、ほとんどのケースは示談交渉で解決し、裁判にはなりません。
裁判になるのは、過失割合で大きな争いがある場合や、保険会社が和解に応じない場合など、全体の1〜2割程度です。
Q5. 弁護士費用特約を使うと、保険料が上がる?
いいえ、弁護士費用特約を使用しても保険等級は下がらず、翌年以降の保険料も上がりません。安心して利用できます。
Q6. 弁護士に依頼すると、示談が長引く?
ケースバイケースです。後遺障害等級認定や過失割合の争いがある場合は、数ヶ月〜1年以上かかることもあります。
一方、争点が少ないケースでは、弁護士が介入することで早期解決につながることもあります。
Q7. 無料相談だけ利用して、依頼しなくても大丈夫?
はい、無料相談だけ利用して、依頼しないことも可能です。複数の弁護士に相談して、費用や見通しを比較してから依頼するかどうかを決めましょう。
記事まとめ:デメリットを理解して賢く判断しよう

交通事故の示談を弁護士に依頼する際の主なデメリットは、費用倒れのリスクです。
特に軽微な事故や損害額が少ない場合は、弁護士費用が増額分を上回る可能性があるため、慎重な判断が必要です。
弁護士に依頼すべきケース:
- 後遺障害が残った(または残る可能性がある)
- 過失割合に納得がいかない
- 重傷で通院期間が6ヶ月以上
- 相手方が弁護士を立ててきた
- 死亡事故
費用倒れのリスクが高いケース:
- 軽微な物損事故のみ
- 通院期間が1〜2ヶ月程度の軽傷事故
- 後遺障害が認定されない
- 損害額が50万円以下で弁護士費用特約がない
デメリットを解消する方法:
- 弁護士費用特約を活用する(自己負担ゼロで依頼可能)
- 初回無料相談で費用倒れのリスクを確認する
- 複数の弁護士に相談して比較する
- 交通事故案件の実績が豊富な弁護士を選ぶ
弁護士に依頼することで、慰謝料が2〜3倍に増額するケースも多く、精神的・時間的負担も大幅に軽減されます。
一方で、すべてのケースで弁護士依頼がベストとは限らないため、自分の事故状況に応じて、冷静に判断することが大切です。
まずは無料相談を活用して、弁護士費用の見積もりや増額の見込みを確認し、後悔のない選択をしましょう。


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