交通事故は、何の予兆もなくある日突然起こります。どれほど気を付けていても、当事者になれば誰もが動揺し、パニックに陥ってしまうものです。それでも、運転者の責務として気持ちを落ち着けて冷静に対処する必要があります。
この記事では、混乱の中でもこれだけは守るべき「絶対にしてはいけないこと」から、交通事故当日の流れ、そして治療開始から最終的な解決に至るまでの流れを解説します。
絶対にしてはいけないこと
- 現場からすぐに立ち去る
- その場で示談交渉に応じる
- 事実を隠したり、嘘をついたりする
現場からすぐに立ち去る
交通事故の被害が小さかったり怪我人がいないからといって、当事者同士の合意があっても現場からすぐに立ち去ってはいけません。交通事故を起こしたら警察に報告し、指示に従わなければいけません。
加害者の場合、報告を怠ったことが原因で「ひき逃げ」や「当て逃げ」として、罪に問われる可能性があります。被害者の場合でも、後から体に不調が起きたとしても人身事故としての因果関係が証明できず、保険金を受け取ることができなくなる可能性があります。
その場で示談交渉に応じる
被害者となった場合「警察に報告して事故を大事にしたくないからお金で解決がしたい」という申し出があったとしても、応じてはいけません。この後に続く、事故当日の流れを参考にして対応してください。
事実を隠したり、嘘をついたりする
警察が到着したら自分にとって不利な事実でも淡々と伝えてください。相手が事実と異なる証言をしているなら否定し、警察から誘導的な質問(脇見運転をしていたんじゃないか?など)をされた場合でも、事実と異なるのであれば認めてはいけません。
記憶が曖昧な部分は「わからない」と答え、強い意志を持って事実のみを伝えるようにしましょう。
交通事故当日の流れ
1.負傷者の救護と危険防止措置
交通事故直後は気が動転して冷静な判断ができないことがよくありますが、「人命」と「安全」を最優先に行動しましょう。負傷者の救護を行い、怪我の状況によっては救急車を呼びましょう。
交通事故が発生したら現場保存が推奨されていますが、二次被害を防ぐために車を動かせる場合は、通行の妨げにならないように安全な場所へ移動するなどしてください。
2.警察に連絡する
事故の大小に関わらず警察を呼びましょう。加害者が「警察を呼びたくない」とお願いしてきたとしても、必ず警察を呼ぶ必要があります。警察を呼ばないと保険金の請求に必要な交通事故証明書が発行されません。
交通事故直後は体に問題が無かったとしても後から不調や痛みが出てくる可能性があります。警察を呼ぶと調書を取るために時間と手間がかかりますが、警察を呼ばないとそもそも交通事故に遭ったことを証明することができなくなります。
3.事故相手の情報収集
警察が到着する前に相手の情報収集をしましょう。必要となる情報は以下の通りです。
- 住所
- 氏名
- 連絡先
- 車の登録番号(ナンバープレート)
- 加入している保険会社
相手が感情的になり情報収集ができない場合は、自身の安全を確保し警察の到着を待ってから間に入ってもらうと良いでしょう。
4.事故の情報保全
過失割合を決定する際に、当事者の記憶だけでは不十分な場合があります。できる限り情報保全をするようにしてください。
- 写真撮影
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車の損傷箇所(アップと引きの両方)、事故現場の全体風景、周囲の信号機や一時停止標識、スリップ痕などを撮影します。
- ドライブレコーダー
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映像が上書きされないよう、マイクロSDカードを抜く、または保存設定を確認してください。
- 目撃者
-
周囲に目撃者がいる場合、連絡先を交換したり、警察への証言を依頼したりすると有力な証拠になる可能性があります。
5.警察の実況見分に立ち会う
警察が現場に到着すると、当事者立ち会いのもとで現場の状況を観察・確認する「実況見分」が始まります。ここで作成される「実況見分調書」は、裁判や保険会社の示談交渉において重要な証拠として扱われます。
大怪我をしてすぐにでも治療が必要な場合を除き、できる限り実況見分には立ち会ってください。相手が都合の良い情報のみを伝えていた場合、一方的な実況見分調書となる可能性があります。
そうなると、受け取ることができるはずだった示談金を、受け取れなくなってしまう可能性もあります。
6.自分の保険会社に連絡する
被害者・加害者に関わらず、自分の保険会社に交通事故に遭ったことを連絡してください。自分に過失があると判断された場合は保険を使わなければなりません。
また、相手が任意保険に加入していない場合は、人身傷害保険や搭乗者傷害保険などを使う可能性があります。特に弁護士費用特約が付いている場合は、上限300万円までなら弁護士費用を負担してもらえます。
- 人身傷害保険
-
自分や同乗者が死傷した場合に、過失割合に関わらず実際の損害額が支払われる
- 搭乗者傷害保険
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契約車両に乗っていた人が死傷した場合に、あらかじめ決められた定額が支払われる
- 弁護士費用特約
-
弁護士への相談料などの費用を保険会社が負担してくれる
7.病院で診断書をもらう
怪我が軽くても重くてもできる限り事故当日に病院で診断を受けましょう。事故当日の受診が難しい場合でも、できるだけ早く、翌日までには受診しましょう。
交通事故から3〜4日以上経過してしまうと、事故と怪我や不調との因果関係の証明が難しくなります。
治療開始から解決

治療の必要がない(怪我がない)事故は「物損事故」として処理され、車両の修理費や代車費用などの財産的損害のみが補償対象となります。以下では、治療の必要がある交通事故の場合について解説しています。
治療開始~完治・症状固定
治療を継続して「完治」または「症状固定」の診断を受けるまで医師の指示に従います。交通事故の示談交渉は治療が終わるまで始めることができません。
症状固定とは、これ以上治療を続けても症状の改善が見込まれないと医師が判断した状態のこと

加害者が任意保険に加入している場合は、病院へ医療費を直接支払ってくれるので被害者は窓口負担無しで治療に専念することができます。このような対応を一括対応と言います。
被害者としては「治療費を一時的にでも立て替えなくても良い」ので、ありがたく感じます。中には保険会社は被害者の味方だと錯覚する方もいますが、加害者側の保険会社は「支払う保険金は少なければ少ないほど良い」という考えを持っています。そのため「早く治療を終わらせよう」とすることがあります。
保険会社が治療の打ち切りを催促してきても、医師の指示に従い治療が必要であれば治療を継続しましょう。治療を打ち切ることによって、治るはずの怪我が完治しない、慰謝料などを含む賠償金が減るリスクがあります。

後遺障害認定
後遺症が残ってもただちに後遺障害となるわけではありません。後遺障害認定を受けるためには、いくつかの要件を満たす必要があります。
- 交通事故による怪我の後遺症
- 将来的な回復が期待できない
- 労働能力の喪失がある
これらの要件を満たした上で、医学的所見に基づき「後遺症の程度が後遺障害等級に該当する」と判断されることで、はじめて認定を受けられます。イメージしやすいように後遺障害の一例を以下で紹介しています。
後遺障害の一例
| 部位 | 等級 | 症状の重さ |
|---|---|---|
| 口 | 3級 | 咀嚼(そしゃく)機能又は言語機能を完全に失ったなど |
| 両目 | 6級 | 視力が矯正しても0.1以下など |
| 手首 | 10級 | 可動域が1/2以下に制限など |
| 肩 | 12級 | 可動域が3/4以下に制限など |
| 顔 | 12級 | 十円玉以上の傷跡など |
示談交渉~解決
完治、症状固定、または後遺障害等級が確定したら、示談金の総額について話し合いが始まります。治療期間が長い場合は「やっとお金の話が始まるのか」と安心するかと思いますが、弁護士の介入が無い場合は「自賠責基準」や「任意保険基準」という低めの基準で示談金を提示されることが多いです。
相手の保険会社はあくまで「加害者側の代表」であることを忘れてはいけません。提示された示談案をそのまま鵜呑みにせず、必要に応じて弁護士などの専門家を頼ることが、納得のいく解決への近道となります。
弁護士に依頼することで「弁護士(裁判)基準」という最も高い基準で示談交渉をすることができます。弁護士費用特約があるなら迷わず活用し、特約が無い場合でも一度相談に行くことをおすすめします。

示談内容に合意した場合は、示談金支払いに進みますが、示談交渉をしても提示された示談内容に不満があれば、調停・訴訟などで争うことになります。しかし、交通事故で裁判に発展するのは1割程度と多くありません。
和解または判決によって、最終的な解決内容が確定したら示談金支払いによって事件が解決となります。
まとめ
交通事故はどれほど注意していても避けられないことがあります。万が一、当事者となった場合でもこの記事を参考に冷静に対応してください。特に被害者となった場合は、どのように対応するかによって賠償金や慰謝料などの金額が大きく変わります。
保険会社の提示を鵜呑みにせず、弁護士などの専門家を賢く活用することを検討してください。交通事故被害に遭いお困りの方は、ぜひ仙台青葉ゆかり法律事務所にご相談ください。

